皮下注射アドトラーザのアトピー治療

皮膚科での治療
この記事は、生物学的製剤アドトラーザ(トラルキヌマブ)による治療体験談です。アドトラーザの使用方法、治療効果、副作用、費用について、また使用した感想についてまとめています。

アドトラーザとは

アドトラーザ(Adtralza)は、中等度以上のアトピー性皮膚炎のための生物学的製剤で、特定の免疫機能を抑制する作用がある。アドトラーザの投与は、ステロイド外用薬などの標準治療によって改善がみられない時、外用薬と並行して、皮下注射によって行われる。通常、初期投与は4本、その後2週間おきに2本皮下注射を行う。

アドトラーザの働き

2018年にデュピクセント(ドュピルマブ)という生物学的製剤が、世界で初めて承認された。

アトピー性皮膚炎は「炎症」「かゆみ」「バリア機能低下」の3つの要素が関係しあい、悪循環を形成します。どれか1つだけではなく、3つすべてに着目し、良い状態を長く維持することが大切です。
デュピクセント®は「IL-4」と「IL-13」という物質のはたらきを直接おさえることで、「炎症」「かゆみ」「バリア機能低下」のすべてに対する効果が期待できます。

サノフィ株式会社 デュピクセントを使用されるみなさんへ HP

デュピクセントは副作用が少なく、痒みや炎症が生じる前に抑え込むことができる画期的な治療として注目を集めた。アトピー治療の新薬として、生物学的製剤の中で一番有名で日本で使用されているのがおそらくこのデュピクセントだと思う。

このデュピクセントに続いて、2022年に生物学的製剤として承認されたのが、レオファーマ社のアドトラーザ(トラルキヌマブ)。デュピクセントがIL-4とIL-13の二つの物質(サイトカイン)を抑えるのに対し、アドトラーザはIL−13のみに絞って働きを抑制する。

IL-13は皮膚のバリア機能低下や炎症、かゆみに関わることが知られているため、IL-13のはたらきを抑制すれば、アトピー性皮膚炎患者さんの皮膚の症状を改善することが期待できます。海外では、アトピー性皮膚炎患者さんは、そうでない人と比較してIL-13の量が多いとの研究結果が報告されています

My Leo Pharma アドトラーザで治療を始めるために HPより

アドトラーザの使用法

レオファーマ株式会社 アドトラーザ適正使用ガイドより

最初は皮膚科医が4本を投与。その際に注射の仕方を教えてもらい、その後は2週間ごとに自己注射。薬剤は薬局に処方してもらい、冷蔵庫保管。

レオファーマ株式会社 アドトラーザ適正使用ガイドより

注射部位はお腹周りをすすめられる。注射30分ほど前に冷蔵庫から出して室温に戻しておく。

皮膚を一部つまみ、摘んだ部分の皮膚に対して45度から直角90度に注射針をすべて差し込み、シリンジを押して薬液を注入する。薬液が全て注入されると、それ位以上シリンジを押せなくなり、バネ式で自動的に注射針が皮膚から戻る。一本終えたら、すぐに別の部分に同様もう一本注射。

痛みを和らげるには、下記2点がポイント

  1. 薬剤が冷たいと痛みを感じやすいので、しっかり室温に戻すこと
  2. 柔らかく少したるんだ部分を選ぶこと

注射針は細く、針を入れる痛みはなし。薬液が入る時にやや痛みはあるが、数秒のこと。

一回目は恐怖心があったけれど、自動的に針は戻るし、とても簡単。

注射部位の反応も今のところなし。

アドトラーザの効果と副作用

アドトラーザの効果

解析には、アドトラーザ®を最長4年間投与した347例の成人患者が含まれました。本剤投与期間のの終了時点において、患者の52.6%で皮膚病変の医師による包括的評価スコア0(消失)または(ほぼ消失)(IGA 0/1)が認められました1。患者の84.5%において、湿疹面積・重症度指数で75%以上の改善(EASI-75)を達成し、64.4%ではEASI-90を達成しました。安全性プロファイルは先行解析の結果と一致しており、4年間の投与期間でアドトラーザ®の継続投与による新たな安全性シグナルはみられませんでした1

レオファーマ株式会社HP 中等症から重症のアトピー性皮膚炎に対する治療薬 アドトラーザ®(トラロキヌマブ)の長期投与に関する新たなデータを発表 2023年10月13日(デンマーク、バレラップ発)より

52.6%の患者で消失またはほぼ消失、患者の84.5%の湿疹面積・重症度指数で75%以上の改善(EASI-75)を達成し、64.4%ではEASI-90を達成というはかなり良い数値。

アドトラーザは16週間で効果がわかるとのことだが、最長4,5年間の追加の統合解析を行なっていて、さらに2,693例の患者(12歳以上、5,320人年の曝露)の試験だの結果ということで、安全性も信頼できる。

新薬だとデータが少ないことが多いけれど、個人的には安心して治療できる。

皮膚科医P先生
皮膚科医P先生

打ってすぐに効果が出るとは思わないでね。

でも3ヶ月以内にはほとんどの人に効果が出るよ。

2週間に2本打って、三ヶ月後に診察で会いましょう!

P先生個人の診察経験からの頼もしい後押しもあり、効果を楽しみに投与開始!

個人の治療経過としては、

  • 投与開始〜5日後位まで 特に変化なし。痒みあり
  • 投与開始〜7日後位から 首や膝裏の痒みが少なくなり、敏感になっていた顔の皮膚の赤みが治ってきた。肌全体の調子が良くなってきた気がする
  • 投与開始〜10日後  夜ぐっすり眠れて、朝すっきり起きれていることに気づく
  • 投与開始〜2週間後 痒かった部分の炎症が治って、皮膚が乾燥して治ってきている
  • 投与開始〜4週間後 肌全体がツルッとしてきた。痒みはほとんどないし、あっても一時的なものでおさまる
  • 投与開始〜8週間後 湿疹はないがいつもカサカサしていた部分(こめかみ、眉間、口周り)の皮向けがなくなってきた。肌表面がツルッとしているだけでなく、全体がしっとりして水を弾く感じ。元々湿疹がなかった部分もいつもよりずっとしっとりしている 

二ヶ月目以降の経過はこちら

今までどれだけ痒みでイライラしたり、眠りが妨げられていたかを体調の良さで実感!

サプリの服用と保湿はしているけど、ステロイドの塗り薬はなし。必要性も感じない

保湿の回数も大幅に減って、肌にかける手間と時間が劇的に少なくなった。

アドトラーザの副作用

レオファーマ株式会社 アドトラーザ適正使用ガイドより

デメリットについては、皮膚科医P先生からこう説明があった。

生ワクチンを打つ予定はある?この薬を打つと生ワクチンは打てないんだ。

デュピクセントもかなり副作用が少ない薬だけど、よくある副作用が結膜炎。アドトラーザはデュピクセントよりも結膜炎になる割合がかなり低くて、もし結膜炎が出てもほとんどぼ場合抗アレルギーの点眼剤などを使ってアドトラーザの投与を続けられるよ

生ワクチンは、病原性を弱くしたウイルスや細菌を使うため、アドトラーザを打つことによって免疫が下がっている状態に生ワクチンを使用すると、その病原に反応(感染)する危険性があるとのこと。

私のアドトラーザ投与による副作用(と思われるもの)

  1. 投与開始から二ヶ月後位から、朝起きた時に目に違和感。おそらく結膜炎。以前別件で眼科から処方されてたまたまストックしていた、フルオロメトロン0,1%(抗炎症ステロイド点眼剤)を3日ほど使用。今の所落ち着いている。もしひどくなれば眼科に行くつもり。
  2. 投与開始から8週間後2−3日ほど喉の痛みあり。体調はいいので、喉の強い痛みだけ。ただの風邪かもしれないし、副作用の上気道感染(上咽頭炎、咽頭炎)かもしれない。日常生活に支障はない程度だが、近日中にホームドクターに診察してもらう予定。

アドトラーザは免疫反応を調整することによって炎症を抑えているから、上気道感染しやすくなるのは自然な流れなのだとP先生も言っていた。

注射部位反応(皮膚の腫れ、赤みなど)は、今の所なし。

アドトラーザのデメリット

新薬といえば、気になるのが費用。

日本では保険適用され、かなり費用が抑えられるものの、やはり高額なのは大きなデメリット。

薬価が高いこと

1シリンジ 150ml 29,295円 

導入月(初回4本、2週間後2本=計6本)175,770円

3割負担 52,731円 2割負担 35,154円 1割負担 17,577円


二ヶ月以降(2週間ごとに2本=計4本)117,180円

3割負担 35,154円 2割負担 23,436円 1割負担 11,718円

3割負担で16週投与するとすると薬代は初月52,731円+(35,154×3ヶ月)=105,462円の負担になる計算。

費用についての注意点

  • 別途診察費がかかる
  • 高額療養費制度の自己負担限度額は、所得や年齢により異なる
  • 加入の健康保険組合により、付加給付制度がある場合もある
  • 学生の場合は、大学などの教育機関で独自の医療費補助制度が利用できる場合がある
  • 自治体により子どものへの医療費補助制度がある場合がある※アドトラーザは15歳以上に適用可能
  • 医療費控除を受けられる場合がある。医療費控除とは、生計を共にする家族が1年間で支払った医療費が10万円を超える場合、所得額に応じて還付金を受け取れるシステム。領収書を保管し、確定申告が必要となる(詳しくは国税庁HP

イタリアでの薬価は一箱(4本入り)2,112ユーロ。一本の値段が528ユーロで、日本の価格よりもずっと高い。でも実は、イタリアでは皮膚科医が処方を認めると、患者の薬代負担はなし(病院での診察費はかかる)。皮膚科医から特別な処方箋をもらい、病院内の支払いがない薬局で薬を受け取る、というシステム。本当にありがたい・・・。

皮下注射であること

注射がどうしても嫌な人にとっては、初月に4本打ち、その後2週間に一度、2本を自己注射するという点は、ハードルが高いかもしれない。

また、痛みが怖いというより、自分で注射することへの恐怖がある人もいるはず。その場合は、慣れるまで皮膚科で投与をお願いするか、注射自体は簡単なので、家族などに協力してもらうという方法もある。

アドトラーザのアトピー治療まとめ

体験談) アドトラーザを処方された経緯

実は、今回アドトラーザを打つことになったのは、私の方から皮膚科医に希望したわけではない。アドトラーザはもちろん、デュピクセントのような新薬が出ていたことさえ、知らなかった。

2024年に入って皮膚の状態が二ヶ月弱で急に悪くなり、久しぶりに皮膚科医P先生に診てもらった一回目の診察でも、アドトラーザの話は出なかった。数年前と同じく、サプリを処方され、三ヶ月我慢すればまた回復するという確信は自分でもあった。

一回目の診察で、特定の項目に強いアレルギーがある私は、モレキュラー(分子)レベルの特殊なアレルギー検査もこの際しちゃおうか、と言われ、その検査の処方箋をもらうためにP先生のいる病院に立ち寄った。その時に、経過観察のために皮膚をチェック。アトピー持ちの人はわかると思うけれど、日によっていい日もあれば悪い日もある。そして、サプリの効果が現れるにはまだ早すぎた。その時、結構悪い状態だったのだ。

そこでP先生から、アドトラーザっていう新薬があって、これよりちょっと古い薬(デュピクセント)よりさらに副作用が少ない薬で、デメリットは値段くらいかな(でもイタリアでは無料)、と話を受け、トントン拍子に決まったのだった。

日本では、自分よりももっと重症のアトピー患者がいるのを知っていたし(イタリアでは稀かも)、今急激に体の一部が悪化しているだけで、いつもこの状態なわけではないから正直驚いた。でも、先生がこれはつらいよね、一刻も早く治したいよね、と気持ちを汲んでくれたのか新薬について話してくれたのがありがたかったし、精神的な負担が大きくなってきたタイミングだったから、迷いはなかった。

体験談)実際にアドトラーザを使ってみて

今アドトラーザは二ヶ月目を終えたところで、この先どう変化していくのかは未知。私への効果は今の所抜群だが、副作用も多少はある。

肌は急激に回復し、普通の人は、私が水着姿でもアトピーだとは思わないと思う。しっかり睡眠が取れて、痒みでイライラしないことが本当に嬉しいし、ホッとしている。肌のターンオーバーが正常になって、強くなっている実感があるから、投与をやめても一定期間は良い状態をキープできるような気がしている。

そして、もしまた悪化しても、またアドトラーザや同類の新薬を使えば、良くなるという安心感がある。もちろん新薬である以上、長期間にわたっての効果についてはまだ不明なことが多いのは事実だ。

アトピーは、疾病負荷がとても大きい病気だ。今回アドトラーザを使って急激に回復したことから、しみじみと実感した。今思えば、投与前は体がいつも重く疲れてイライラしていた。痒みで集中力に欠け、気持ちが塞ぎ、人に会いたくなかった。

アドトラーザを投与できる条件を満たすのなら、デメリットを踏まえても、試す価値が大いにあると、というのが私の結論。重症であればあるほどなおさら。

まだまだ知られていない薬だから、ネット上の個人的な体験談もほぼなかった。デュピクセントはいくつかあったので参考にさせてもらった。今回の私のアドトラーザの体験談が、アトピーで悩む人たちにとって何らかの形で役立てば嬉しい。

アドトラーザ投与はまだ続くので、また経過をアップ中。

また、新薬と同時に、皮膚科医に処方してもらったサプリの摂取も続けてます。

サプリについてはこの記事をどうぞ。

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